2025年1月1日
ふくおか緑の党 代表 荒木龍昇
明けましておめでとうございます。危機と転換期にあるいま、未来に希望が持てる年になるよう私たちは行動することが求められています。
昨年はコロナ禍の終息を迎え平常の生活へ戻り始めた年でした。しかし、コロナ禍前とは大きく異なる社会状況となりました。気候危機の深刻化、自民党の旧統一教会との癒着や裏金事件に見られる金権腐敗政治と積年の腐敗政治に対する政治不信、自公政権の戦争政策の推進による平和の危機、そして昨年の総選挙で自公政権が少数野党になりましたが、戦争政策や原発推進などについては国民民主党や日本維新の会、更に立憲民主党の一部の議員は自公政権と同じ方向に向かっているという、政治の危機があります。東京都知事選や兵庫県の出直し知事選に見られるSNSを使ったフェイク情報や世論誘導は民主主義の脅威となっています。時代の大きな転換期を迎えています。歴史を鑑みれば、市民運動が自由で人権が守られる社会を創ります。未来を担うこどもや若者が自らの未来を創るための闘いを支えるために、現役世代が責任を果たさなければなりません。
その為には、いま何が起こっているのか、私たちは冷静に見なければなりません。
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気候危機が深刻化しています。異常な高温が地球を覆い「地球沸騰」化しており、世界各地、そして日本国内において気象激甚災害が起っています。気温や海水温度の上昇は気象災害を生じさせるとともに、農業や漁業に壊滅的打撃を与えています。産業の危機と同時に食糧危機が迫っています。
昨年元日に能登半島大地震が発生し、改めて地震大国であることを認識させられ、福島原発事故を彷彿させる事態となりました。震源地周辺では最大4.7mの隆起があり、寸断された道路や使用できなくなった港湾によって多数の住民が孤立しました。珠洲市に計画されていた原発が稼働していれば福島原発事故同様の過酷事故が生じ住民の避難は不可能であったことが容易に想像されます。しかし、日本政府は二酸化炭素を排出しないことを理由に原発の再稼働、更に新設を進めるとしています。震源地に近く震度5の志賀原発は稼働していなかったことが幸いし、被害があったものの過酷事故になりませんでした。このことをもってあたかも原発の安全性が証明されたかのように振る舞っていることは許されません。
気候危機が深刻化しているにもかかわらず、日本政府は政策を大きく後退させています。新エネルギー政策では、COP28で合意した「再エネ3倍、省エネ2倍」を守らず、石炭火力の維持と原発の再稼働・新設と原発の依存強化、再エネ微増としています。経済優先で、AI利用やIT化によるクラウド使用増、データセンターの増加によるエネルギー消費の増加を理由にしています。このままでは日本は国際的な責任を果たせず、「地球沸騰」の暴走が現実になります。政府のエネルギー政策を転換させることが急務です。
能登半島では震災復興が進まない中で、9月に短時間集中豪雨による甚大な災害を受け、住民は二重の苦しみを受けています。しかし、自公政権は能登半島の災害復興よりも政権維持を目的に解散総選挙という暴挙に出ました。保身のために住民が犠牲になる政治の貧困をこれ以上許してはいけません。
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いま、平和の危機が迫っています。自公政権、そして国民民主党、維新の会などが憲法改悪を目論んでいます。自民党が憲法改悪の第一歩として挙げている「緊急事態条項」は、先日韓国で起こった大統領による「戒厳令」発動により、反対勢力の国会議員や市民、報道関係者を逮捕状なしで逮捕し、独裁政権を樹立しようとした状況に繋がります。「緊急事態条項」は、麻生元自民党副総裁が「ナチスに学べ」と言ったごとく、独裁政権に繋がるものです。憲法前文の「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」を全ての国民が再確認する必要があります。
ところが、安倍政権が集団的自衛権を容認する憲法違反の戦争法を成立させ、岸田政権はそれを実体化する安保三文書を改定し防衛政策の転換を閣議決定、防衛費を増額しトマホ-クなど敵基地攻撃能力を持つ兵器の配備と国民を戦争に動員することを始めました。日本全国に核戦争にも耐える自衛隊基地の強化と継戦能力を高めるための武器弾薬の備蓄と基地の増強を始めています。戦争能力を高めるために、沖縄・南西諸島を筆頭に日本全土で基地化と民間の港湾や空港を日常的に軍事使用しています。博多港は重要利用港湾に指定され軍事訓練に使用されます。福岡空港ではオスプレイが飛来し傷病兵の輸送訓練や日米合同軍事訓練に使われており、日常生活の中に非日常の戦争が染みこんでいます。国民保護法によるJアラートの訓練で戦争への抵抗感を奪い、台湾有事に備えて石垣島や宮古島の住民を九州に避難させる訓練、米軍兵や自衛隊員の戦闘死亡者や負傷者を本土の病院施設へ運ぶ訓練など、かつてのアジア太平洋戦争末期に行った戦闘や疎開を想起させる訓練を行っています。有事法制、国民保護法、秘密保護法、共謀罪法、盗聴法、戦争法、マイナンバー法、個人情報保護法、安保三文書改訂、これは自衛隊が政府にも知らせず行った1963年の「三矢研究」での戦時体制が、60年を経て完成したことを意味します。松本清張は「三矢研究」は226事件と同質の自衛隊にクーデターを意味するとみていました。軍事実力組織である自衛隊は、国民を守るのではなく国を守るとしており、現に日米共同訓練では反政府市民運動の鎮圧訓練を行っています。今日の戦争前夜の状況は、1930年代の中国侵略戦争をしている当時の日本国内の状況に極めてよく似ています。平和の危機は目前に来ています。ウクライナ戦争やパレスチナ戦争を見ても、一旦戦争が始まれば容易に終結しません。戦争関連法案は全て廃止し、日本政府に、平和外交に徹し軍備増強をやめさせなければなりません。
しかし、希望の光もあります。昨年ノーベル平和賞に日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が選ばれました。2017年の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞、2021年の核兵器禁止条約の発効と、核兵器廃絶の動きの中でウクライナ戦争やパレスチナ戦争で核兵器の使用が語られ、中国の核の増産、北朝鮮の核開発と、核使用の可能性が高まる状況を受けての受賞でした。被団協は核兵器が無い社会、戦争の無い社会を世界に発信しました。被団協の活動と高校生平和大使による日本国内、世界に向けての活動は、私たちに希望の光を与えています。しかし、日本政府は「核の傘論」に固持し、核兵器禁止条約を批准しないばかりか核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバーとしても参加していません。「核の傘論」は虚構であり、核保有国の核による威嚇は抑止力にならず、危機を高めるだけです。核軍縮をすすめ、戦争を無くすためには、各国間の信頼を築く外交政策しかありません。日本政府は平和外交の中心となるべきで、核兵器禁止条約の批准をすべきです。
また、日本の外交政策を縛っている80年も続くアメリカの占領を終わらせなければなりません。日米安保条約の本質は、アメリカの世界戦略の下、米軍が日本の基地を必要な時に自由に使用でき、自衛隊を米軍の先兵として使用することです。自公政権が進める日米軍事同盟の強化は.具体的に自衛隊が米軍の指揮下に置かれることを意味します。台湾有事の際には沖縄本島及び石垣島や宮古島など南西諸島が最前線になり、米軍の捨て石になります。アジア太平洋戦争末期の沖縄戦と同じ構造が、米軍及び自衛隊によって創られます。同時に、日本全土が戦争に巻き込まれます。
日常的にもアメリカの占領による被害が出ています。日米地位協定によって、米軍兵士や軍属による犯罪や米軍関連の事故について、日本政府は直接介入できません。さらに、日本国内の空域は、米軍は日本の国内法に縛られず自由に飛行できますが、東京都の空域及び沖縄空港の空域は米軍の管制下にあり、日本の航空機は飛行できません。戦後80年を迎える今日も、日本はアメリカの占領下にあります。同時に、米軍事力と米経済力によって日本経済と政治も支配されています。この戦後80年になるにもかかわらず、日本がアメリカの占領下にある事実を私たちは直視しなければなりません。
アメリカの占領を終わらせるために、まずは地位協定の改定を実現することです。更に日米安保条約改定のロードマップをつくる必要があります。その為にも政権交代が必要です。昨年の衆議院選挙では自公政権は少数与党になりましたが、参議院では自公政権は多数を占めています。来る参議院選挙においても自公政権を少数与党にしなければなりません。更に、政治の信頼を回復させるには、国民民主党や日本維新の会などの改憲野党の議席を減らし、立憲野党を増やす必要があります。同時に、市民と立憲野党の共闘を深化させ、立憲野党が真に市民の信頼を得るものなるよう、市民運動が求められます。アメリカの占領を終わらせることが、核兵器が無い社会、戦争が無い社会を実現する道筋です。いまこそ市民運動による変革が必要な時です。
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自公政権によって国民の暮らしは良くなったのか、1997年をピークに平均賃金は下がり続け、韓国にも追い抜かれています。更に、アベノミクスによって日本経済は一段と衰退しました。三本の矢の一本目の矢である異次元の金融緩和は、ゼロ金利政策で市場に溢れた資金は株と不動産投機に株価の高騰、地価・不動産価格の上昇、円安を誘導。設備投資や人への投資に行かず、物価上昇を招き、日本経済を低迷させました。二本目の矢である大胆な財政出動は、国土強靱と称して無駄なダム建設や土建事業に投資する一方、福祉や介護に投資せず、国民に自己責任を押しつけ、教育や研究に投資せず、大学の法人化により基礎研究や人文学など稼がない学問を切り捨て、国民生活を悪化させ、イノベーションを阻害し文化の劣化を起こしました。三本目の矢である規制緩和は、解雇指南や非正規雇用を拡大し、人を使い捨てにする経済を加速、無秩序な開発による環境破壊、コストカットの経営でイノベーションを起こしませんでした。
日本経済を立て直すには、アベノミクスの検証と円安の是正が必要です。金融資産を持つ富裕層と輸出関連企業は利益を得ていますが、物価高騰による市民生活は困窮し、中小企業は厳しい状況にあります。円安は国民生活を犠牲にし、経済を停滞させています。円安であっても輸出量は増えておらず、輸出関連企業は為替差益で利益を上げています。輸出量が増えていないため下請け企業の受注は増えていません。むしろ円安によって危機的状況にあります。
さらに、今日でもアベノミクスの後遺症が続いています。安倍政権の置き土産である異次元の金融緩和による円安が物価高騰を引き起こし、賃金上昇が追いつかず、実質賃金がマイナスとなっています。更にウクライナ戦争、パレスチナ戦争によってエネルギー価格の高騰が国民の暮らしを更に苦しくしてきました。円安は金融資産を持つ富裕者や輸出関連企業には株高や為替差益による利益を出していますが、物価を押し上げ、原材料を輸入する中小企業や小売り業、外食産業の経営を苦しくし、国内経済を停滞させています。円安政策は直ちに是正されなければ、日本経済は更に衰退します。円安政策を是正し、所得税、法人税、金融課税、相続税など、負担能力がある者が負担する税の累進制を強化する公正な税制と、逆進性が強い消費税については食品など生活関連品の課税を引き下げる必要があります。格差と貧困を無くし、心の豊かさと幸せが実感できる社会に向けて政治を変える必要があります。
物価上昇に賃金が追いつかず、国民生活が困窮していることを背景に、国民民主党が主張する103万円の壁問題が国会で争点となっています。この問題は税制全体を見直しすることが本筋であり、矮小化させてはいけません。これまで世帯単位で作られて来た様々な制度については、原則個人を基本に転換すべきです。103万円の壁についても、世帯での制度がベースになっていることが問題であり、原則働く者は等しく税と社会保険を負担能力に併せて負担する制度にすべきです。目先の減税政策ではなく、国民の公正な負担の構造に改革し、社会参加の意欲を損なわない社会に変える必要があります。また、この議論の背景の一つに世代間の分断を図る声がありますが、社会全体の公正性を確保する必要があります。
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私たちはいま日本で起こっている様々に事象について冷静に見つめ、社会変革への運動を更に発展させなければなりません。危機と転換期にあるからこそ、市民運動の発展が求められています。世界各国で社会の右傾化が進み、民主主義が危機的状況にあります。市民の手によって独裁政権が生み出され、極右政権が誕生しています。気候危機対策も後退の兆しが見え、気候危機は深刻化しています。日本でも、SNSによるフェイク情報の拡散とその背景にある既成政党に対する政治不信が東京都知事選挙や兵庫県知事選に見られ、民主主義の危機が表面化しています。
ふくおか緑の党は、市民と立憲野党の共闘の更なる深化を進めていきます。自由と人権が守られ、格差と貧困を無くし、原発に頼らない気候危機を乗り越える政治を進めます。ふくおか緑の党の会員を増やし、地方自治を深化させ、市民運動を更に広げ、未来に希望が持てる政治に変えていきましょう。
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