1、情勢の特徴
①17年総選挙の結果は、公明党の議席29議席(前回35)に減らした。公明党の議席減の原因が「公明党は安倍首相と同じじゃないか」と支持者が離れていったというものである。これは17年5月3日に安倍首相がビデオメッセージで「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書きこむ」という9条改憲案のことを指している。実は安倍首相が示した案こそ、公明党が9条改憲の「落としどころ」として考えていたものであった。安倍首相の5月3日の提唱は、もともとは16年の参院選の結果を経て、日本会議が公明党の「加憲」を踏まえて出したもの。17年総選挙で議席を減らした公明党は、連立政権内での発言力を高めるために名護市長選において「自主投票」から自民とともに「推進派」候補を推薦、当選させることで力を見せつけた。
②18年発議、19年に国民投票
森友・加計問題で窮地にあった安倍政権は、政権の浮揚にむけた衆院の解散・総選挙の賭けに打って出た。それは、安倍個人の力の源泉を豊かにすることと、改憲に向かっての時間稼ぎでもあった。そのためには、野党を分断することであり、「北朝鮮危機」を口実にー「国民の安全」が脅かされているー安倍政権は自公で3分の2を維持し、2021年10月までの時間的猶予を得ることができた。とは言え、安倍政権の改憲に向けた政治的日程は窮屈になっている。2019年6月には参院選、その前に天皇の退位と新天皇の即位が19年4月~5月に迫っている。そして今年の9月には自民党の総裁選(安倍の総裁3選が確実視されている)が控えている。天皇行事を政治的喧噪の中で実施するわけにはいかないとすれば、改憲の国民投票は19年の3月までには実施しなければならない。とすれば遅くとも18年中に国会発議を済ませなければならないということになる。そうしないと20年の新憲法施行の「新しい日本」の中で東京オリンピックを迎えることができなくなる。20年は安倍首相にとっては「戦後レジームからの脱却」のターニングポイントになるはずだからだ
2、国会発議をさせない、2018年前半が正念場
①通常国会が始まっており、「働き方改革」に関する官邸側の虚偽データをめぐって野党追及が厳しくなっており、その如何で発議ができないとの観測も流れる。しかしこれまでの安倍政権の運営を見てみるならば(秘密保護法、安保法制、共謀罪など)世論の動向を数の力で押し切ってきた経緯があり、楽観はできない。3月25日の自民党大会までに9条改憲の成案を得るとしている。党内には安倍首相の案と石破案(2項の削除)に大別される対立が存在する。いっぽう公明党は、9条に関して1歩は踏み出していない。こうした中では、通常国会で各党の改革案を討議し、国会としての「憲法改正」案がまとまる見込みはない。とすれば秋の臨時国会での発議を自民党は目指す、というのが常識的な見方だ。
②昨年から「3000万署名」が始まり、今年の5月3日を締め切りとしている。この3000万という数字は、昨秋の総選挙比例区で立憲民主、共産、社民が獲得した票(1100、440、220)を合計すれば1760万になり、その数字に約1300万上乗せしたものになる。日本の人口の4人に1人が署名をすることになる。15年の安保法=戦争法廃止の署名が目標の2000万に対し1580万の実績である。あの大きな反対運動の盛り上がりのなかでの数字である。今回は署名を進める中から「自衛隊を認めないの?」と言われ、前回と違い、反応が良くないという声が多く聞かれる。よほど頑張らないと達成しない恐れもある。この3000万署名の意味は、「国会での発議をさせない」という多数派の政治的意思を表明することにある。自民党議員はもちろん、ふらついている野党議員へ「国会でしっかりしないと次の選挙で落選させる」というインパクトを与えるものである。「国民投票で頑張れば勝てる」という声も一部では聞こえるが、それは間違いであろう。国民投票は政権側にとってもリスクを抱える。イギリスのEU離脱の国民投票の例を引くまでもなく、国民投票で否決されたら即、政権の瓦解につながる。そうした国民投票であるからこそ、勝てる時に国民投票を仕掛けてくることになる。だからこそ、発議をさせない運動が、国会内外で重要になり、とりわけ市民と野党との連携が求められている。
国会発議をめぐっては、通常国会の状況を見る限りでは、そう簡単に「全ての国会議員」による発議(与党プラス一部の野党だけでの合意ではなく)が一挙に進むわけではない。現在の新聞での世論調査によると、今の国会での発議に賛成する意見は2~3割である。こうした中で、政権側があせって発議にこぎ着けても、国民投票では勝ち目がない思わせることが、発議をあきらめさせる条件である。
こうした状況下にたしかに現在はあるし、これからの通常国会が終わる今年前半が大きな正念場になるに違いない。そしてその力で、安倍総裁3選が実現できない情勢をつくることになる。
私たちは、街頭・職場・身の回りで「安倍9条改憲NO!憲法を生かす」3000万署名に取り掛かり、大きな渦をつくっていかねばならない。