個人情報保護の責務は、地方自治体にあるー学校安心メール問題と自衛隊名簿提供問題
- 広報部
- 2023年9月10日
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個人情報保護の責務は、地方自治体にある
-学校安心メール問題と自衛隊名簿提供問題-
7月末に福岡市内の小学校108校のほか、糸島市・春日市・筑紫野市内含めて134校(西日本新聞より)において、休校などの緊急連絡を保護者等に一斉連絡できる「安心メール」に新型コロナウイルスワクチンの治験者を募集する案内が流されたことが問題となりました。「安心メール」は各学校が民間事業者と契約し、学校が保護者に登録を促し、保護者と事業者との契約になります。緊急連絡が必要な時に学校が民間会社に投稿し、民間会社からメールを登録者に配信します。民間事業者は広告主を募り広告費によって運営されており、民間会社は登録者に協賛企業の広告も配信します。こどもへのワクチン接種は必要ないとの医師の指摘もあり、慎重に議論されるべきものです。「安心メール」で配信されたワクチンの治験の募集は、学校が推奨していると受け止められる恐れが強く問題です。
今回多くの保護者や市民から問合せや申し入れなどあり、ワクチンの治験の募集は中止となりましたが、個人情報保護の視点からも重大な問題があります。個人情報を取り扱う上で学校長の判断で民間事業者と契約することが可能なのか、また保護者は学校からの契約内容等の説明を理解し同意しているのか、民間事業者に渡された個人情報について誰が管理責任を負うのかなど、多くの問題があります。これらの問題を考慮せず、無料で使えることを理由に使うことは問題です。教育委員会は民間のシステムではなく、教育委員会が管理できる連絡システムを作る必要があります。
デジタル関連法が2021年5月に成立し、総理大臣をトップとするデジタル庁が省庁および自治体の情報を統括する仕組みになりました。政府は昨年デジタル田園都市国家構想を閣議決定し、国および地方のデジタル化を進め、統一仕様の「ガバメントクラウド」上に構築した標準準拠システムへ2025年までに各自治体の基幹業務のデータを移行させるとしています。マイナンバーの紐付けの拡大とマイナンバーカードを国民に所持させることがシステムの要となっています。システムが平準化され、自治体間の情報交換の利便性は高まりますが、同時に国による情報管理、監視社会に繋がる恐れがあります。
いま、福岡市では2020年6月から、本人の同意を得ないまま18歳・22歳の市民の個人情報を自衛隊に提供しています。同意を得ない個人情報の提供は人権侵害です。今回の「安心メール」のように民間事業者に個人情報が安易に提供されることが許されないことは当然ですが、たとえ国の機関であっても同意がない個人情報を自衛官募集という理由で提供されることは許されません。日本の行政における個人情報保護措置はEUなどに比べると甘いと言われています。地方自治体は、私たちは個人情報保護についてより厳格にする責務があります。同時に、私たちは個人情報利用について監視する必要があります。地方自治の深化が社会を変える鍵です。
代表 あらき龍昇
(ふくおか緑の党会報57号より掲載)
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