「大濠の季節(海鳥社)」の著者である勝瀬志保さんに、今回(4/19(火))はじっくりと時間をとって、舞鶴公園を案内していただきました。勝瀬さんには、以前ふくおか緑の党のイベント「いのちのリレーツアー」でもガイドしていただきました。
案内の前に、勝瀬さんが持ってきてくださった2015年に撮影の伐採された木々の切り株をまとめた何ページもあるファイルを見せていただきました。木々が伐採されたことに気づき、記録を行い、市役所にかけあったそうですが、改善されることもなく現在も伐採が続いているそうです。
伐採されるのはエノキやムクノキといった実がなる樹木が多く、1本切られるだけで何羽の渡り鳥や野鳥が飢えるか・・・と、勝瀬さんも話されていました。実際に、舞鶴公園内に入ると野鳥の鳴き声があちこちに響いていました。福岡市の計画にあるような桜の木ばかりの公園にしてしまったら、この野鳥たちの食糧はなくなってしまいます。
勝瀬さんは樹連(いつきれん)という団体名で、園内で季節の野鳥の写真展もされていて、このときも途中の遊歩道脇に50枚近い写真が展示されていました。
<写真>樹連の野鳥写真展1、2
公園内では、ソメイヨシノなどは樹が傷んでいても、支えなどを施して残すのに対して、他の(地味な)樹木は少しの傷みや、傷みはないが遊歩道にかかるなど場所の問題で、実に多くの大木が伐採されていました。園内のソメイヨシノについても、本来なら100年以上の寿命があるけれど、公園内では、根っこが踏まれるため、50〜60年ほどの寿命しかないとのこと。あと十数年後か、ソメイヨシノの寿命が尽きたとき、この公園はどんな景色になるのでしょう。
<写真>ソメイヨシノは大事にする1、2(写真だと分かりづらいが、大きな傷みがある)
石垣に生える雑草についても、2年前までは石垣の上からロープで命綱をつけた方々が作業をされていたそうですが、近年はその姿も見られず、また繁っていたツユクサが一斉に枯れるなどの状況から、除草剤を使用されているのでは・・・と。この影響か、この石垣からの水が流れ込むと思われる水路に、以前来ていた水鳥たちが来なくなってしまったのだそうです。また、石垣に巣をつくるシジュウカラや、石垣の隙間に果実を蓄える貯食を行うヤマガラなどへの除草剤の影響も心配されていました。
また、除草剤をまかずに草刈りをしている場所についても、園内の雑草を一斉に刈ってしまうため、食糧がなくなることによって、チョウ類が激減しているそうです。チョウたちに配慮するように、少しずつ時期をずらして、草刈りすることはできないのでしょうか?
除草剤も一斉に行う草刈りも、管理のしやすさという人間の都合で、そこに生きる多様な生きものたちの生態をまったく考慮していない現状に、愕然としました。
また、遊歩道にかかるという理由や、石垣が隠れるという理由で、樹木の大きな枝が切られることによって、樹木自体のバランスが崩れることや、切り口から菌類が入り込むことによって、樹木が傷んでいくのだそうです。倒れる危険性があるというけれど、その原因を作っているのは人間ではないのか?とも、勝瀬さんもおっしゃっていました。
枝がばっさり切られたというムクノキもあり、石垣が観光バスから見えないという理由で切られたのでは?と、勝瀬さん。実際に、通りと石垣の間に位置する樹々が切られているように見受けられました。
舞鶴公園は、須崎公園とは違って大きい樹木が多く、根ごと移植ができないから、伐採なのでしょう、と勝瀬さん。樹木が育つのに流れた時間を考えると、簡単に取り戻すことができないものをこんなに簡単に伐採していく今の福岡市の都市構想のあり方、福岡市だけでなく、国全体の開発のあり方があまりにも、生物多様性や環境問題、気候危機といった世界的な問題をまったく考慮されていないように見えて、悔しさと落胆とに苛まれました。
また、公園内の除草を専門家ではなくシルバーセンターの方などに委託しているらしく、希少種なので残して欲しいと訴えていたチャセンシダなども、園内清掃の後、ごっそりと除草されてしまったとの話もありました。舞鶴公園内には、なんと以前は28種類ものシダ類が生息していたそうですが、除草や伐採によってシダ類に適度な環境がなくなったことなどにより、年々減っているのだそうです。同様に、伐採により、木陰に繁殖するコケ類であるジョウゴゴケ・シンガサゴケもなくなってしまったのだそうです。
園内で時々みかける小さな白い花を咲かせているシャクも、生息地がなくなり続け、数が激減したそうです。近接する学校との間の斜面にちらほらと咲いているのと、通路のそばに咲いているのをみかけましたが、以前は一面に咲いていたのだとか。このような野草ではなく、周辺に雑草を生えないような物質を出す水仙を植えるというような造園思想によって、野草の生息地がどんどん減らされているのです。
また、以前は避けるように柵がつくられていたイヌマキも、何本も伐採されていました。柵のところ以外のものも合わせると、11本ものイヌマキが切られたそうです。
福岡市は「一人一花」運動を行なっていますが、この「一人一花」運動で植えられる外来種の草花によって、ツマグロヒョウモン・クロマダラソテツシジミ・タテハモドキ(近年在来種が幼虫の食草となっていることが確認)・ムシャクロツバメシジミといった外来種のチョウが繁殖しているのだそうです。本来なら、海を渡って福岡にたどり着いたとしても、食糧がないので繁殖できなかった昆虫たちが、外来種の草花を植えることによって、繁殖可能となってしまっていると。「一人一花」運動、せめて在来種にすることはできないものかと、勝瀬さんは嘆いていました。また、温暖化の影響か、アオビタイトンボ・ベニトンボといった外来種のトンボたちも舞鶴公園内で見られるようになったそうです。
<写真>外来種のチョウ・トンボ
舞鶴公園の整備や開発の仕方について、全く議論がされないことが問題だと勝瀬さん。生物多様性が専門の方や、植物・昆虫などに詳しい有識者の方などからの意見を聞くこともなく、ただ観光のために樹々を伐採していく。今まで、園内の樹々や鳥たちを眺めていた地元の方々を追い出し、観光客目当てのテーマパークを作る感じなのでしょう、と荒木代表とも話されていました。
また、市から業者への作業委託の仕方自体も問題で、伐採した樹木の重量で契約を行なっているため、より重量が稼げる大木が犠牲になるという話もありました。
天神から1〜2駅。街なかのオアシスのように、希少種のシダやコケが繁り、年間120種類(日本国内での野鳥が500〜600種と言われているので、そのおよそ5分の1)を越える渡り鳥・水鳥たちを見ることができる大濠公園と舞鶴公園。それを支えているのは、多種多様な樹木とそこに住まう虫たち。また、人目に触れる機会は少ないそうですが、イタチやタヌキ、テン、アナグマもいるそうです。
目先をかえれば、これらは他にはない観光資源になり得るというのに、国からの支援もあり、福岡市は壊したら二度と取り戻せない貴重な自然環境を、文化財の利活用・都市開発の名の下に破壊し続けています。
わたしたち人間は、重機などの発達によって、簡単に大木をも伐採する力を得ました。ただその力を振るうのに見合う知恵は、どこかに置き忘れてきてしまったようです。そこに住まう多種多様な生きものたち、複雑にからみあった生態系。それらを理解しないまま、力を振るい続けてきたツケが、今の温暖化や気候変動・気候危機なのではないでしょうか?
公園内を2時間近く歩いて感じたのは、木陰の心地よさでした。案内していただいた日は、幸い好天に恵まれたこともあり、余計に木陰を歩くと日向との違いが歴然でした。近年の温暖化の影響もあり、都市部はヒートアイランド現象が発生しています。それを樹々たちが抑えてくれていることを感じます。環境問題の解決策のひとつとしても、都市部の公園を守らなくてはならないと思います。
まずは、身近な福岡市内の自然から守りませんか?
須崎公園から、雁の巣にうつされた木々の姿をみたことはありますか?
舞鶴公園・大濠公園の樹々を大量に伐採して作られるセントラルパーク構想に、「待った」をかけられるのは、わたしたち福岡市民です。一緒に、声をあげていきましょう。
ふくおか緑の党会員 前島直美
勝瀬志保さん撮影・制作のスライドショー 「福岡城址の鳥たち Birds on the ruins of Fukuoka Castle」 もどうぞ!
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