■ニュージーランドの新政権、気候変動で海面上昇の危機にさらされる太平洋諸島の住民向けに「気候変動難民ビザ」の設定を検討へ。試行的に100人枠を目指す(RIEF) (2017-11-01 16:41:16)
(記事引用元)一般社団法人環境金融研究機構
http://rief-jp.org/ct12/7411
ニュージーランドで先月発足した労働党とNZファーストの連立政権は、気候変動の激化で海面上昇リスクにさらされている太平洋諸島の人々に対して、特別に移住を認める「気候難民ビザ」の発行を検討していることを明らかにした。連立政権に協力する形となった緑の党の選挙政策を採用する形となる。実現すると、気候変動を難民受け入れの条件とする世界初のビザとなる。
連立政権で気候変動相に就いた緑の党の党首、James Shaw 氏は今週初めに、暫定的な人道的ビザのカテゴリーとして、気候変動による海面上昇によって、沈む島から移住を余儀なくされる人々を受け入れるためのビザの制定の可能性に言及した。「特別の移住ビザは、太平洋諸島の島国とのパートナーシップとして、われわれが目指す取り組みの一つになる」。
総選挙では緑の党は、気候難民対策として、年間700人、今後の6年間で約4000人を特別のビザで受け入れる移民枠の設定を提案していた。今回の気候難民ビザは、とりあえず試行的に100人の枠を設定使用という考えだ。
Shaw氏の発言は、最近、ニュージーランドン移民保護裁判所が、ツバルから気候変動の影響を理由としてニュージーランドに難民申請をした2家族の訴えを拒否したことを受けたものとなった。現行のビザ規定では、気候変動を難民の理由としていないことから、新たな特別ビザを発行する必要性に迫られた形だ。
ニュージーランドの新政権、気候変動で海面上昇の危機にさらされる太平洋諸島の住民向けに「気候変動難民ビザ」の設定を検討へ。試行的に100人枠を目指す(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構
ツバルの2家族は、海面上昇だけでなく、飲み水へのアクセスが困難で塩水被害の増加、ツバルでの高い失業率などを難民申請の理由にあげていた。ニュージーランドの難民受け入れ規定は、国連の1951年難民条約に基づき、人種や宗教、国籍による差別、あるいは政治団体や宗教団体のメンバーであることでの迫害といった理由を受け入れの対象としており、それに該当しないとして却下された。
ビクトリア大学の国際環境法専門家のAlberto Costi准教授は「現行の難民条約は、環境難民を想定していない。だが気候変動の影響は非常に厳しく、迫害に匹敵する」と難民規定の変更を支持している。ただ、気候変動の被害をどの程度受けているかという難民の線引きが課題、としている。
ニュージーランドでは2014年に、キリバスから最初の気候変動難民としてIoane Teitiotaさんが申請をした事例がある。同氏の場合も、最高裁まで争ったが、結局、受け入れられず、翌15年にキリバスに送還されている。試行的なビザの設定とともに、気候変動の影響を評価する明確なクライテリアの制定が可能かどうかも議論になりそうだ。