7/29(土)に福岡市内の小学校108校において(糸島市・春日市・筑紫野市を含めると134校(西日本新聞より))、休校などの緊急連絡を保護者等に一斉連絡できる「安心メール」のシステムを使って新型コロナウイルスワクチンの治験者を募集する案内が配信されました。保護者などが学校や教育委員会、メールシステムの運営会社テクノミックス社に声を上げたことで、7/31(月)に同社は「一部の受信者の方々に混乱を招く不適切なものだった」と謝罪し、治験は中止されました。
今回の「広告」が新型コロナワクチンの治験者の募集だったため、特に大きな反響を呼びましたが、そもそも学校のメールシステムが企業広告によって成り立っていることに問題があります。個人情報保護の視点から見ると、個人情報を取り合う扱う上で学校長の判断で民間事業者と契約することが可能なのか、保護者は学校からの契約内容等の説明に同意しているのか、個人情報は誰のものなのか、誰が管理責任を負うのか、など多くの疑問点・問題点があると考えます。
そこで、荒木龍昇が代表を務める「個人情報保護とDXを考える会」が8/7(月)に福岡市教育委員会へ下記の申し入れを行いました。
【経緯】
●7/25(火) テクノミックス社が福岡市内の市立小学校あてにファックスを送信。ファックスを受け取った複数の学校が同社に対し「この内容を『学校安心メール』を使って配信するのは不適切ではないか」と指摘したが、テクノミックス側から「安心メールは広告で成り立っているものなので、理解してほしい」と言われた。(RKB)
●7/29(土) 「福岡市内108校(毎日新聞)」「福岡市、糸島市、春日市、筑紫野市計134校(西日本新聞)」にメールを配信。
●7/31(月) テクノミックスは「一部の受信者の方々に混乱を招く不適切なものだった」と謝罪し、治験は中止された。(RKB)
※親会社である株式会社アクリートは7/31(月)にホームページで「弊社子会社である株式会社テクノミックスのメール配信に関して」を発表。
2023年8月7日
福岡市教育委員会 石橋 正信様
個人情報保護とDXを考える会
代表 荒木龍昇
「学校安心メール」について申し入れ
福岡市の小学校において、休校などの緊急連絡を保護者等に一斉連絡できる「安心メール」に新型コロナウイルスワクチンの治験者を募集する案内が流されたことが問題となりました。既に多くの保護者等が福岡市教育委員会への問合せや申し入れがなされていると聞いています。報道によると、学校が民間事業者と契約し、学校が保護者に登録を促し、学校が緊急連絡が必要な時に民間会社に投稿し、民間会社からメールを登録者に配信するとしています。民間事業者は広告主を募り広告費によって運営されており、民間会社は登録者に協賛企業の広告を配信するとしています。
私たちは、DXが今後とも推進されることは必要であると考えていますが、同時に個人情報保護が厳格になされる必要があると考えています。個人情報保護の視点から見ると、個人情報を取り合う扱う上で学校長の判断で民間事業者と契約することが可能なのか、また保護者は学校からの契約内容等の説明に同意しているのか、個人情報は誰のものなのか、誰が管理責任を負うのか、など多くの疑問があります。
この視点から以下の申し入れをいます。
1、「学校安心メール」の運用について説明ください。
➀「学校安心メール」の仕組みについて説明を求めます
➁「学校安心メール」の学校と事業者の契約書を示してください。
➂「学校安心メール」の契約は学校長の判断でできるのか、
④教育委員会は契約内容及び契約実態について把握しているのか
⑤「学校安心メール」の運用主体と管理責任はどこにあるのか
⑥「学校安心メール」の契約内容は保護者に説明され、保護者は内容を理解した上で同意しているのか
⑦「学校安心メール」の利用学校数、通信内容など利用状況
2、今回問題となった「新型コロナウイルスワクチンの治験者を募集」がながされた経緯と教育委員会が把握している内容、及び教育委員会の見解について説明を求めます。
3、配信内容が「新型コロナウイルスワクチンの治験者を募集」であるから問題と考えているのか、他の広告の配信は問題がないのか、個人情報の管理の在り方として民間事業者に個人情報を扱わせることに問題がないのか、教育委員会の見解を求めます。
4、学校教育上必要な連絡システムについては、教育委員会が責任を持ってシステムの設計および運用と管理をすべきと考えますが、教育委員会の見解を求めます。
以上の点について速やかにご回答ください。
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